相続における経営権の確保:安定化対策と遺産分割対策
非上場会社の相続における経営権の確保は、企業の存続と発展に直結する重要な課題です。相続が発生した際、安定的な経営継続を目指し、遺産分割においても経営権の維持を考慮することが不可欠です。このため、相続人調査、相続財産調査、遺産分割協議の正確な進行が求められます。
相続人調査の重要性
相続人調査はいかなる相続でも、そのプロセスの基礎を形成します。この調査を通じて、正確な相続人を特定し、将来の法的紛争を防ぐことが重要です。
遺産分割協議を有効かつ円滑に進めるためには、相続人の特定が欠かせません。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などを取得し、相続人の範囲を明確にすることが必要です。
相続財産調査のプロセス
非上場会社の株式を含む相続財産の調査は、相続手続きの中核をなします。このプロセスにより、相続に伴う税負担や遺産分割の方針が決まるといえるでしょう。
特に非上場株式の場合、証券会社や証券保管振替機構を通じては判明しません。そのため、株式発行会社に直接連絡を取ったり、株主の情報を確認したりすることが必要です。これには株券、株主総会招集通知、配当金の支払通知書などが活用されます。
遺産分割協議の進め方
遺産分割協議は被相続人が遺言書を残していない場合、特に重要になります。この協議では相続人全員が参加し、遺産の分配を決定するのが原則です。非上場株式の遺産分割では、その評価額が分配方法に大きな影響を及ぼします。
相続における相続税の納税資金対策
非上場会社の相続では、株式の高い評価額が相続人に多額の相続税をもたらすことがあります。一方で非上場株式は換金性が低いため、支払いが困難な場合も少なくありません。
そのため、相続人が発行会社に非上場株式を売却し、納税資金を捻出する方法が有効な手段となるケースがあります。
相続税の支払いの困難さと解決策
相続により取得した非上場株式を発行会社に譲渡することで、相続税の納税資金を確保する手段があります。この手法は、換金性の低い非上場株式の特性を考慮した、効果的な解決策といえるでしょう。
ただしこの方法には、非上場株式の譲渡に関する税務上の複雑さが伴うので注意が必要です。
自己株式の譲渡取扱い
非上場株式を発行会社に譲渡した場合、譲渡代金の一部は「みなし配当」として扱われ、高い税率が適用される可能性があります。このみなし配当は、通常の株式譲渡と異なり、所得税法上の配当所得に該当するものです。
みなし配当に該当する部分の金額には、所得税法に基づく超過累進税率が適用され、相続人に高額な税金を課せられる可能性があります。そのため、相続税の納税資金を捻出する際には、税負担の増加に注意が必要です。
非上場株式の特例課税
非上場株式の譲渡に関する税法の特例が存在します。この特例は、相続により取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合、その譲渡所得に一律の低い税率を適用することを可能にするものです。
この特例の適用により、相続税の申告期限から3年以内に譲渡された非上場株式に対しては、納税資金の確保が容易になります。よって相続人は、相続税の支払いをより効率的に行えるでしょう。
非上場会社の相続における自社株の評価引き下げ対策
非上場会社の相続における重要な課題のひとつは、自社株の評価を適切に管理することです。評価が過大になると、相続税の負担が増大し、会社の財務状況に影響を及ぼす可能性があります。ここでは、自社株の評価を引き下げる基本的な原則と施策について見ていきましょう。
株価評価引き下げの基本施策
非上場株式の相続税上の評価を引き下げる基本的な施策は、あえて赤字を作ることと含み損を作ることの2つがあります。これらの方法は、非上場株式の評価が主に業績と純資産の大きさに基づいているため効果的です。
赤字を作る方法としては、役員退職金の支払いや含み損のある不動産の売却が挙げられます。一方、含み損を作る方法は、たとえば大型設備投資や不動産購入などです。
会社規模による評価方法の変動
非上場株式の評価は会社の規模に応じて異なり、小規模な会社では純資産価額方式のウェイトが高くなる傾向があります。小規模会社の場合、経営者の万一の事態に対するリスクが高いためです。
一方、大規模な会社では業績による評価のウェイトが高くなります。大規模会社では経営者に万一の事態が発生しても、組織が存続しやすいと考えられるためです。
評価引き下げの施策
高収益部門の隔離や分離は、自社株の評価を引き下げる施策として効果的です。これには、高収益・高評価部分を子会社として隔離する方法や、高収益部門を完全に別会社として分離する方法があります。
これらの施策を実施することで、自社株の評価をダイナミックに引き下げることが可能となります。また、これらを基本的な施策と組み合わせることで、さらに大きな効果が期待できるでしょう。
オンラインセミナー紹介『非上場会社の相続・事業承継対策のポイント』
実務経営カレッジ プレミアムが提供するオンラインセミナー『非上場会社の相続・事業承継対策のポイント』では、事業承継における自社株の取扱いに焦点を当て、重要なポイントが解説されます。専門家による具体的な事例と、組織再編税制の活用方法が学べるでしょう。
セミナーの目的と講師
このセミナーの目的は、非上場会社の経営者や後継者に自社株の取り扱いに関する、深い理解を後押しすることです。セミナーでは、令和5年度資産税関係の税制改正の概要が紹介され、参加者は最新の税制変更に基づいて自社株の取り扱いを理解し、適切な対策を講じることができます。
講師は税理士法人タクトコンサルティングの代表社員で、公認会計士および税理士の資格を持つ専門家の小野寺太一氏です。小野寺氏の豊富な経験と専門知識が、セミナーの内容を濃厚にし、参加者に実用的なヒントとアイデアを示唆することでしょう。
セミナーで取り扱う主な課題
セミナーでは主に3つの課題にフォーカスされます。ひとつは「経営権の確保と安定化に向けた戦略の策定」です。これには遺産分割対策も含まれ、参加者は自社株の経営権を守る方法が学べるでしょう。
また、「相続税の納税資金対策についても深く掘り下げられます。これは、税負担を軽減し、企業の財務安定を保つための重要な要素です。
さらに、自社株の評価引き下げ対策が重要な議題として取り上げられます。評価の低減を実現するための、具体的な方法と戦略が学べるでしょう。
まとめ
非上場会社の相続と事業承継における対策は、複雑であり、正確な理解と適切な計画が必要です。特に、非上場株式の評価や法的枠組みの理解は、相続税の適切な処理に不可欠です。
中小企業にとって、事業承継は経営継続性の観点から極めて重要であり、中小企業庁はこれを支援するためにさまざまな施策を提供しています。これらは相続税の猶予や免除、金融支援などを通じて、後継者の負担を軽減することを目指すものです。
事業承継計画の策定には、税制面での特例措置を含む幅広い支援があります。これらの措置を適切に利用することで、中小企業の安定した事業承継と持続的な成長が期待できるでしょう。
今回取り上げた課題を含めて、相続と事業承継についてわかりやすく解説する、オンラインセミナー『非上場会社の相続・事業承継対策のポイント』を視聴して、会社の相続や事業承継にぜひ役立ててください。