特例措置の概要
非上場株式等に関する相続税・贈与税の納税猶予及び免除の特例は、事業承継を円滑に行うための税制上の支援策です。この制度は、特定の条件を満たす非上場株式等の相続または贈与に対して、納税の猶予または免除を認めます。
ここではこの特例措置について、その目的と背景、適用要件、手続きと適用期間に分けて詳しく解説します。
制度の目的と背景
この特例措置の主な目的は、中小企業等の事業承継時における納税資金の負担を軽減し、事業の継続と発展を支援することです。特に、非上場企業の株式を承継する際に必要となる相続税や贈与税の納税資金が、事業運営に影響を与えることを防ぐために設けられました。
背景として、非上場株式の相続や贈与による事業承継が、納税資金の調達難から事業の廃止や売却につながるケースが問題となっていました。このような状況を改善し、中小企業の健全な発展と経済全体の活性化を図るため、この特例措置が導入されたのです。
適用要件
適用要件の第一には、贈与者または被相続人が非上場企業の経営に実質的に関与していたことが挙げられます。会社の代表権を有することや、議決権の50%以上の保有が必要です。
また、相続または贈与の対象となる非上場株式等について、特定の要件を満たす必要があります。
加えて、後継者が相続または贈与によって非上場株式等を取得した後、一定期間内に代表権を有する等、事業の実質的な経営を引き継ぐことが求められます。これは、事業の継続性と経営の安定性を担保するための要件です。
また、非上場株式等の相続または贈与にあたっては、特定の業種に属する企業や、一定の規模を超える企業に対してはこの特例措置の適用が制限されます。具体的には、中小企業であること、風俗営業等特定の業種に該当しないことなどが条件です。
ほかにも、相続または贈与を受ける非上場株式等に関して、事前に税務当局による認定を受けなければならない場合があります。この認定プロセスを通じて、特例措置の適用要件を満たしているかの検証が行われます。
手続きと適用期間
この特例措置を利用するためには、適用を希望する者が税務署に対して特定の書類を提出し、申請を行う必要があります。提出書類は、事業承継計画や非上場株式等の評価書類などです。
納税猶予または免除を受けるための適用期間には制限があり、特例措置の適用を受けた後、一定の条件下でのみ猶予や免除が継続されます。この期間内に、条件を満たし続けることが前提です。
条件を満たさなくなった場合、納税猶予や免除の特例が取り消され、猶予されていた税額が一括で納税義務者に請求されることもあります。そのため、事業承継計画の適切な実行と管理が重要です。
これらの要件は、事業承継の成功を左右する重要な要素であり、税務当局によるチェックも予想されます。そのため、特例の適用を受ける企業は、適用条件に関する継続的な自己監査と記録の保持が肝要です。
特例措置の具体的内容
中小企業の事業承継を円滑に進めるため、非上場株式等に関する相続税及び贈与税の納税猶予及び免除の特例が設けられています。
この制度は、経営の承継が円滑に進むように後継者への贈与や相続時に納税負担を軽減するものです。特例措置と一般措置には明確な違いがあり、適用条件や猶予される税額の割合、対象となる株式の範囲などが異なります。
納税猶予の条件
納税猶予を受けるためには、中小企業者であること、及び特定の事前計画を策定し提出する必要があります。特例措置では、全株式が対象であり、納税猶予割合は100%です。
雇用確保要件では、承継後5年間で平均8割の雇用維持が必要とされます。事業の継続が困難な事由が生じた場合には、猶予税額の再計算と差額の免除が可能です。
この措置は、後継者により事業が継続されることが前提です。相続時精算課税の適用は、60歳以上の贈与者から18歳以上の者への贈与に限定されます。
贈与税の納税猶予を受けるための条件には、後継者が贈与時に20歳以上であり、贈与の直前3年以上役員であることなどです。
特例措置の効果
特例措置により、後継者は財務負担を軽減し、事業の安定した継続が可能となるでしょう。それによって中小企業の経営承継が、スムーズに進むことが期待されます。また、雇用の維持や地域経済への貢献も期待できます。
特例措置は、事業承継の際の税負担を大幅に軽減することで、後継者のモチベーション向上にもつながるでしょう。結果として、経営の革新や事業の発展にも寄与する可能性があります。
また、この制度の利用は、スムーズな事業承継を促すのみならず、後継者にとって事業に対する理解を深める機会です。長期的な視点での事業計画の策定が図られ、事業の持続可能性が高まります。
制度の課題と改善提案
非上場株式等に関する納税猶予制度は、多くの事業承継をサポートしてきましたが、制度の複雑さが利用の障壁となっているケースもあります。具体的には、細かな要件や手続きの煩雑さなどです。
また、雇用確保要件や代表権の条件など、一定の要件を満たす必要があるため、中小企業にとってはこれらの要件をクリアすることが難しい場合があります。これは、事業の特性や規模によっては、制度の利用が困難となる可能性を示唆するものです。
改善提案としては、制度のより広範な企業への適用を目指し、要件の緩和や手続きの簡略化が挙げられます。手続きの簡略化は、特に小規模事GPT
業者がこの制度をより容易に利用できるようにするために重要です。
また、デジタル技術を活用した手続きのオンライン化も、利便性の向上に寄与すると考えられます。
さらに、納税猶予期間後の納税負担を軽減するための支援策の拡充も重要です。たとえば、納税猶予期間終了後の利子税負担を軽減する措置や、条件を満たした場合の税額免除の範囲を拡大する提案が考えられます。
将来への展望
非上場株式等に関する納税猶予及び免除の特例制度は、今後も日本の事業承継の支援において中心的な役割を果たすことが期待されます。制度の更なる改善と普及によって、多くの中小企業の円滑な事業承継が促進されるでしょう。
また、グローバル経済の変化やデジタル化の進展に伴い、事業承継の概念自体が変化する可能性があります。これに対応するためには、制度の柔軟な適用や更新が重要となり、継続的な見直しと改善が必須です。
経済産業省や国税庁などの関連機関による、情報提供や支援策の拡充も重要となります。事業承継を計画する企業や後継者に対する具体的なガイドラインの提供や、専門家による相談体制の強化が必要です。
事業承継に際しては、税制上の支援だけでなく、経営戦略や人材育成の観点からの総合的な支援が必要です。非上場株式等に関する納税猶予及び免除の特例制度を活用しつつ、持続可能な事業承継を実現するための多角的なアプローチが求められます。
セミナー紹介『事業承継税制の特例措置のポイントと活用法』
今回見てきましたように、事業承継税制は、事業を承継する際に発生する相続税や贈与税を軽減する制度です。そして事業承継税制の特例措置は、事業承継を円滑に進めるための重要な制度です。
オンラインとオフラインの両方で受講できるセミナー『事業承継税制の特例措置のポイントと活用法』では、事業承継税制の特例措置について、詳しくかつわかりやすく解説されます。
2024年6月29日にオンライン配信と会場開催が予定されているこのセミナーは、資産税特化型会計事務所が培ったコンサルティングスキルが学べる講座です。
セミナーでは以下の項目が、詳細に解説される予定です:
- 事業承継税制の特例措置の概要
- 贈与税の特例措置のポイント~適用要件の整理~
- 特例承継計画・都道府県知事認定等のポイント
- 事業承継税制の特例措置の相談事例
- 特例措置の適用後の留意点
- 特例措置の活用事例の紹介
このセミナーの講師を務めるのは税理士法人タクトコンサルティングの税理士・公認会計士である高木真哉氏です。高木氏は事業承継税制や相続税の専門家として、多くの企業の事業承継を支援してきました。
受講特典としては、セミナーを2講座以上受講された方に「事業承継実務全書(全715ページの本格的な実務書)」が進呈されます。書籍は、会場または郵送にて受け渡しされる予定です。
このセミナーは、オンラインとオフラインの両方で受講できます。
オンライン受講:Zoomを使用
会場で受講:実務経営サービスセミナールーム(東京都豊島区東池袋)
詳細とお申し込みに関しては、下記のページをご確認ください。
6月29日 事業承継税制の特例措置のポイントと活用法 – 株式会社実務経営サービス
まとめ
非上場株式等に関する相続税・贈与税の納税猶予及び免除の特例は、事業承継の円滑化を目的としたものです。適用されることで、相続または贈与による株式取得時の財政負担が軽減され、事業の継続性が保たれる可能性が高まります。
しかし、この制度の適用を受けるためには、中小企業の定義に当てはまること、適切な後継者要件を満たすことなど、一連の厳格な要件を満たすことが必要です。制度の利用実績については、多くの事業承継がこの特例を利用して円滑に進んでいる事例が報告されています。
特例措置によって多額の相続税が課税されるリスクを回避し、中小企業の存続と成長を支えています。一方で、制度の複雑さや適用要件の厳格さから、利用に際して税理士のアドバイスを求めるケースも多いです。
税理士のみなさんはセミナー等で事業承継税制の特例措置を深く理解して、顧客企業の円滑な事業承継のサポートにぜひとも磨きをかけてください。