吉永弁護士の「社長、他人事ではないですよ!」

中小企業の経営者にとって、税理士は最も身近な存在です。そのため、税務に限らず、公私にわたってさまざまな相談が寄せられることも少なくありません。そのような相談に応じて、各種の周辺業務に取り組んでいる方も多いでしょう。しかし、周辺業務は税理士の専門領域ではないため、対応ミスによりトラブルが生じやすいと言われています。この連載では、日本税理士会連合会顧問の鳥飼重和先生(鳥飼総合法律事務所)の監修により、税理士に寄せられることの多い相談と、弁護士から見た有効な対応方法を解説します。

第49回 「 経営者保証に関するガイドライン」を

知っていますか?

執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 梅原 梓

武田社長 吉永先生、経営者ってのは、なんだか損な役回り

ですよね。毎日会社の資金繰りに頭を抱えて、会社が失敗し

たときには、会社とともに借金も背負わされて、そのわりに

社員からの人望がそんなにあるわけでもないし……。

吉永弁護士 まあ社長、急にどうされたのですか?

武田社長 いや、友人の経営者が最近破産して、一文無しに

なってしまったんですよ。昔は羽振りのよい会社だったの

に、リーマンショック後に資金繰りが厳しくなって……。で

も、なんとか立て直そうと、友人は自分だけでなく、家族・

親戚からもお金を集めて、会社に入れていたんです。だけ

ど、とうとうそれでもどうにもならなくなって、会社も破

産、保証人だった友人も破産。何もかもなくなってしまった

のです。

吉永弁護士 それはお気の毒ですね……。でも、もう少し早

く専門家に相談していれば、そうはならなかったかもしれま

せん。社長は、「経営者保証に関するガイドライン」をご存じ

ですか?

武田社長 いや、初めて聞きました。

吉永弁護士 今まで、社長のご友人のように私財をなげうっ

て会社の再建をめざし、結局会社の再建も実現せず、社長も

全てを失ってしまうということが多く繰り返されてきました。

 しかし、会社の廃業等をするのであれば、早めに見切りを

つけたほうが債権者に迷惑をかけませんし、社長に対しても

全財産を取り上げるのではなく、ある程度の責任を負えば、

財産を一定程度残してあげてもよいのではないか、このよう

に考えられ始めているのです。これは政府の方針でもありま

す。このような内容が書かれているのが、「経営者保証に関するガイドライン」なのです。

 このガイドラインによりますと、いくつかの条件があるも

のの、会社が破産した場合に、社長に数百万円程度の現金や

自宅を残すことも可能です。

武田社長 そんなのがあるんですか!

吉永弁護士 ええ。さらに、このガイドラインでは、そもそ

も融資をする際に、経営者保証に頼るべきではないというこ

ともうたわれています。

武田社長 そんな、社長の保証なしに銀行は金を貸してくれ

るわけありませんよ!

吉永弁護士 こちらも、法人と個人が明確に分離されている

などの条件はあるのですが、その場合には、保証を付けない

融資を検討するよう金融機関に求めています。

 金融庁の監督指針のなかには、金融機関にガイドラインの

趣旨や内容を十分に踏まえた適切な対応を行うよう求めてい

るものがあります。さらに、ガイドラインを融資慣行として

浸透・定着させていくことも求められています。

 金融庁は金融機関の監督官庁ですから、金融機関としても

ガイドラインは無視できない存在といえます。

武田社長 そうなのですか……。まだ信じられないけれど、

これから借り入れをするときに、無保証融資を受けられる場

合があるかもしれないのですね。

吉永弁護士 既に保証契約をしている融資についても、解除

を申し出ることができますよ。また、事業承継の場面で、後

継者に当然のように保証を引き継がせないということも、ガ

イドラインでは金融機関に求めています。

武田社長 いやあ、お金を借りる際に保証をするのは必須だ

と思っていたのですが、必ずしもそうではないのですね。

 今度わが社の状況などを見て、無保証融資の条件を満たし

ているかなど、具体的な相談をさせていただいてもいいです

か。

吉永弁護士 もちろんです!

【解説】

⑴「経営者保証に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」)について

 ガイドラインは、日本商工会議所と一般社団法人全国銀行協会を事務局とする「経営者保証に関するガイドライン研究会」が公表し、2014年2月1日からその運用が開始されています。あくまでガイドラインですので、法的拘束力はありません(ガイドライン第2項)が、金融庁の監督指針のなかでも触れられているなど、金融機関についても無視のできないものとなっています。

⑵概要

 ガイドラインの適用対象となる保証契約は、主債務者が中小企業であり、保証人がその経営者であるものとなっています(ガイドライン第3項)。

 法人と経営者との関係が明確に区分・分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないことなど経営者保証を付さない融資の促進については第4項、第5項に記載があります。

 また、新規融資ではなく、現在保証契約付きで融資を受けている場合などに、事業承継等の場面で既存の保証契約の見直しをすることについては、ガイドライン第6項に記載があります。

 さらに、保証債務履行時(会社倒産時)の対応についてはガイドライン第7項に記載があります。経営者が多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等(従来の自由財産99万円に加え、年齢等に応じて100万~ 360万円)を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討することや、保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除することなどが定められています。

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