吉永弁護士の「社長、他人事ではないですよ!」

中小企業の経営者にとって、税理士は最も身近な存在です。そのため、税務に限らず、公私にわたってさまざまな相談が寄せられることも少なくありません。そのような相談に応じて、各種の周辺業務に取り組んでいる方も多いでしょう。しかし、周辺業務は税理士の専門領域ではないため、対応ミスによりトラブルが生じやすいと言われています。この連載では、日本税理士会連合会顧問の鳥飼重和先生(鳥飼総合法律事務所)の監修により、税理士に寄せられることの多い相談と、弁護士から見た有効な対応方法を解説します。

第39回 ブログへの画像利用で、

    損害賠償請求されることも

執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 梅原 梓

吉永弁護士 社長、では今日の打ち合わせはこのあたりで

鈴木社長 いつもありがとう吉永先生。ああ、そういえばこ

の間、当社に変な内容証明郵便が来たのよ。聞いたこともな

い会社から、「当社の社員が著作権を侵害している。不法行為

だから損害賠償として30万円を請求する」だなんて書いてあ

って……。

 よく、身に覚えのない請求書が来て支払ってしまうってい

う詐欺の話があるけれど、それと一緒よね? 最近は内容証

明郵便を使うなんて、手が込んでいるわよね。

吉永弁護士 そうですか……。とりあえず、その書面を見せ

ていただいてもいいですか。

鈴木社長 ええ、どうぞ。これです。

吉永弁護士 ……社長、これは詐欺などではありません。この

書面の差出人である「株式会社GAZO屋」さんが、御社と御社

の従業員である佐藤さんに損害賠償請求をしてきているのです。

鈴木社長 なんですって!? どういうこと?

吉永弁護士 佐藤さんは御社の製品を、御社の名前を使って

ブログで紹介したりしていませんか?

鈴木社長 ええ、しているわよ。佐藤さんのブログは美術工

芸品の写真をただ載せるだけではなくて、その工芸品に合っ

た画像もうまく利用して、とても魅力的なものになっている

の。しかも、画像はインターネット検索で出てくるものを使

っているから無料だし、佐藤さんは本当によく工夫してくれ

ているわ。でもそれがどうしたの?

吉永弁護士 その佐藤さんのブログで使用されている画像

が、株式会社GAZO屋さんの著作権を侵害しているようです。

鈴木社長 でも、佐藤さんはインターネット上で検索して出

てきた画像をただ載せているだけよ? それなのに著作権を侵

害しているの?

吉永弁護士 インターネットの検索で出てくる画像にも、もち

ろん著作権はあります。転載を許可することが特に書かれてい

ない画像については、画像を作成した人や、その人が許可した

人以外は、コピーやインターネット掲載は基本的にできません。

 さらに、佐藤さんが使っていた画像は、株式会社GAZO屋

さんが有料で配布している画像だったようです。そこで、無

断で使用しているということで、利用料相当額の損害賠償請

求がされているのです。

鈴木社長 そんな……。確かにキレイな画像だと思っていた

けど、まさか有料だったなんて……。

吉永弁護士 しかも御社にも損害賠償責任が生じます。

鈴木社長 なんですって!?

吉永弁護士 使用者責任という制度があるからです。使用者

責任とは、使用者は、その被用者が行った行為が不法行為に

当たる場合、使用者として被害者に損害賠償責任を負うとい

う制度です(民法715条)。使用者責任が成立するためには、

被用者の行為が「事業の執行につき」なされることが必要と

なります。佐藤さんの行為は、御社の製品の販促ブログであ

るわけですから、会社も責任を負うのです。

鈴木社長 そんな……。どうすればいいの?

吉永弁護士 私の方で調査をしてみますが、これが事実であ

ればしかるべき額は支払わなければなりません。

鈴木社長 分かったわ……。

吉永弁護士 でも、まだ早いうちに分かってよかったですよ!

もっと長い間放っておいたら、さらにたくさんの画像を掲載

することになり、損害賠償額も増えてしまったかもしれませ

んから。

鈴木社長 そうね。勝手に判断せず、吉永先生に聞いてよか

ったわ。これからもよろしく頼むわね!

吉永弁護士 任せてください!

【解説】

(1)著作権の侵害と賠償額に関する特則

 著作権者は著作物を複製する権限を専有しています(著作権法第21条)。インターネット上の画像を自身のブログに転載することも「複製」となりますので、著作者等の許可なく画像を転載してしまうと、上記の著作者の権利を侵害することになります。

 著作権が故意・過失により侵害された場合、著作権者は侵害した者に対して損害賠償請求をすることができますが(民法709条)、その際の損害額について著作権法上特則も設けられています(著作権法第114条)。

(2)使用者責任

 使用者責任とは、被害者が不法行為を行った者を雇っている会社に対しても責任を追及できるという民法715条の規定です。

 使用者責任が発生するためには、違法な行為が使用者の「事業の執行について」行われたことが必要です。この事業執行性については、裁判では外形的に事業執行と認められるかどうか、という点が重視されますが、販促ブログの場合には事業執行性は明らかでしょうから、会社が責任を免れるのは難しいということになります。

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