吉永弁護士の「社長、他人事ではないですよ!」

中小企業の経営者にとって、税理士は最も身近な存在です。そのため、税務に限らず、公私にわたってさまざまな相談が寄せられることも少なくありません。そのような相談に応じて、各種の周辺業務に取り組んでいる方も多いでしょう。しかし、周辺業務は税理士の専門領域ではないため、対応ミスによりトラブルが生じやすいと言われています。この連載では、日本税理士会連合会顧問の鳥飼重和先生(鳥飼総合法律事務所)の監修により、税理士に寄せられることの多い相談と、弁護士から見た有効な対応方法を解説します。

第37回 E コマースをスタートするための

    三種の神器

執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 永吉啓一郎

鈴木社長 吉永先生、あけましておめでとうございます。今

年もよろしくお願いしますね。

吉永弁護士 あけましておめでとうございます。こちらこ

そ、今年もよろしくお願いします。

 さて、お電話をいただいた件なのですが、何か新たなチャ

レンジをされるそうですね!

鈴木社長 はい。吉永先生もご存じのとおり、弊社では美術

工芸品の販売をしています。

 昨年までは、工芸品を直接お客様にご覧になっていただ

き、販売していたのですが、今年は若手社員からの提案もあ

って、インターネットでも販売していきたいと考えていまし

て。

吉永弁護士 なるほど、それは素晴らしいと思います! E

コマースをお始めになるということですね。

鈴木社長 Eコマースというのですか~。でも、インターネ

ット販売となると、直接お客様と会わないし、法律的な問題

が出てきそうなので、事前に注意すべきことなどのアドバイ

スを先生からいただきたいと思いまして。私は、インターネ

ットに強いわけではないので……。

吉永弁護士 分かりました。それでは今回は、Eコマースサ

イトの開設について、法律的に注意すべきポイントを3つお話

しします。Eコマースのスタートアップにおいては必須とな

る内容です。

鈴木社長 よろしくお願いします!

吉永弁護士 まず、Eコマースサイトを開始するポイントと

して、1.利用規約の設置方法、2.いわゆる「特商法の表示」

の設置方法、3.申し込み画面の設定方法 という3点を押さえてください。

 サイト設計を外注される場合には、最初に業者さんに説明

しておかないとトラブルになることも多い部分です。

鈴木社長 分かりました。3点ですね。

吉永弁護士 はい。まず、1.の利用規約ですが、これは御社

とお客様との間で、Eコマースを利用するにあたっての約束

事を決めるものです。ただし、この約束事を法律的にお客様

に守っていただくには、その規約内容が「契約」になってい

る必要があります。

鈴木社長 利用規約を「契約」にするにはどうすればよいの

でしょうか。

吉永弁護士 具体的にいうと、ⅰ申し込みの直前に確認でき

る場所(申し込みと同一ページまたは最低でもそのページに

目立つ形でリンクを張る)に利用規約を設置し、ⅱチェック

ボックスや申し込みボタンを利用して、「同意した上」での申

し込みであることを明確にするということができていれば問

題ないでしょう。

鈴木社長 なるほど。ただ作成して、サイトのどこかに載せ

ておけばよいというわけではないのですね。では、次の2.の

特商法の表示というのはどのようなものなのですか?

吉永弁護士 Eコマースは、「特定商取引に関する法律」(以

下、「特商法」といいます)における「通信販売」という取引

類型にあたるので、特商法の定めるルールを守らなくてはな

りません。そのひとつが特商法上の表示義務です。

 これはEコマースを含む「通信販売」については、きちん

と特定の事項を表示して、お客様が分かるようにしておいて

くださいという趣旨のものなのです。

鈴木社長 特商法の表示……。インターネットでものを買う

時に見たことあるような……。

吉永弁護士 はい。よくご覧になっていると思いますよ。代

金の額、代金の支払い時期、支払い方法、商品の発送時期や

商品の送料などを表示する必要があります。

 代金の額など、個別商品によるものは、商品の販売ページ

に個別に記載して、それ以外の部分を表示したページに対し

て、申し込みボタンの近くにリンクを張るという方法がよい

と思います。

鈴木社長 なるほど、法律上の義務だから、みなさんサイト

に掲載していたのですね。

 最後の3.の申し込み画面の設定方法なのですが、これにつ

いても教えてください。

吉永弁護士 意外と守られていない例も多いのですが、端的

にいうと、お客様からのⅰ申し込みの最終段階で、「申し込み

内容確認画面」を設置して、ⅱ確認の上、訂正できるシステ

ムを組んでおく必要があります。

鈴木社長 うーん。いろいろと規制というか、面倒なことも

多いのですね。

吉永弁護士 そうですね。でも、これらの設定は法律に沿っ

て運用するために必要という側面もありますが、クレームな

どの防止になりますし、なんといってもお客様に親切なサイ

トになりますので、トータルで見るとオペレーションコスト

は低くなると思いますよ。

鈴木社長 そうなのですか。確かに、お客様に親切なサイト

になるのはよいことですよね。

吉永弁護士 仰るとおりです。さらに利用規約や特商法の表

示等の内容について詰めていく必要がありますが、販売商品

が決まるなど、もう少し話が具体的になってきてからご説明

させていただこうと思います。

 利用規約や特商法の表示の内容は、 ビジネスの展開などに

伴って常にブラッシュアップしていくものなので、何か気づ

いたことがあれば、定期的になんでもご相談ください。

鈴木社長 分かりました! 先生、引き続きよろしくお願い

します。

*解説*

⒈Eコマース(EC)とは

 Eコマースとは、日本語でいうところの「電子商取引」を指し、インターネット上で、商品の販売

等の契約を成立させる取引をいいます。このEコマース(以下、「EC」という)のスタートアップの

ためのウェブサイト開設にあたって押さえておくべき3点を解説します。

⒉ECスタートアップのためのウェブサイト開設におけるポイント

(1)利用規約を契約内容にするための設置方法

 まず、利用規約を当事者の契約内容にするためには、当事者の意思表示の合致が必要です。つま

り、ⅰお客さんがサイトから商品を買う前にその利用規約の内容を確認できるようになっており、

ⅱそれに同意した上で商品を買うことにしたといえるようにする必要があるということです。具体

的には、

○申し込みの直前(申し込みと同一ページまたは最低でもそのページに目立つ形でリンクを張

る)に確認できる場所に利用規約を設置する

○チェックボックスや申し込みボタンを利用して、「同意した上」での申し込みであることを明

確にするということができていればよいでしょう。

(2)特定商取引に関する法律による表示

 ECは、「特定商取引に関する法律」(以下、「特商法」といいます)における「通信販売」という

取引類型にあたるので、特商法の定めるルールを守らなくてはなりません。特商法では、「通信販

売」を行う場合には、消費者トラブルを避けるため、一定の事項を購入者が分かるように表示しな

ければならないとされています。それが、いわゆる「特定商取引法の表示」です。

 主なものとして、

○販売価格または役務の対価

○申し込みの撤回または解除に関する事項

○代金または対価の支払い時期

○商品の送料

○代金または対価の支払い方法

○事業者情報

○商品の引渡時期・役務の提供時期

を表示する必要があります。

(3)申し込み画面の設置方法

 上記のとおり、ECにおいては特商法の適用がある特商法14条1項2号では、「顧客の意に反して

通信販売に係る……申し込みをさせようとする行為として主務省令で定めるもの」として、特商法

16条1項各号に禁止行為を定めているのですが、

○申し込みの最終段階で、「申し込み内容確認画面」を設置してある

○それを確認の上、訂正できるシステムになっている

といえれば、特商法16条1項各号の禁止行為にはあたらないので、スタートアップの際は、そのよ

うな設計にするべきでしょう。

⒊その他

 今回は、既存事業のECのスタートアップという点から説明していますが、全く新しく既存事業と

は関連のない商品等を販売する等の場合には、業法等による許認可も必要になる場合があります。ま

た、広告等には景品表示法等さまざまな法律が関連します。その際には、専門家にご相談ください。